京都を彩る建物と庭園

認定 並河靖之七宝記念館

(なみかわやすゆきしっぽうきねんかん)
[Namikawa Yasuyuki Shippo Kinenkan]

所在地 東山区  選定番号 第10-038号

推薦理由(抜粋)
 明治・大正期に七宝家として活躍した帝室技芸員 並河靖之の邸宅兼工房。主屋は明治27年(1894)に建築された。近代京都の産業を支えた七宝を感じることができる建物。



認定番号 第166号

認定理由
 並河靖之(1845~1927)は,明治期の代表的な七宝作家として知られる。青蓮院宮家に仕えていた並河家の養子となった後,明治期に有線七宝の製作を始めたとされる。パリ万博(1878)で銀賞を受賞するなど,海外においても好評を博した。明治27年(1894)に建築された工房・事務所を併設した居宅が,現在の並河靖之七宝記念館の建物である。主屋は,通りからは出格子とむしこ窓の伝統的な京町家の外観をとるが,南から東側面には,7代目・小川治兵衛(植治)の作庭による苑池を中心とした庭園が広がる。琵琶湖疏水から導水し七宝製作に使用するのにも用いたもので,植治が庭園に疏水を利用した初めての作品である。
 主屋南東側の縁下まで引き込まれた池を中心として,随所に景石を配する。庭に面する座敷は和室に絨毯を敷き,椅子とテーブルによる商談の場として用いられた。このためイス座の視点に合わせたガラス障子を嵌めている。2階の8畳間は2間幅の大床を備え格天井を有する格式ある意匠である。この他,七宝製作に用いられた工房や,防火のため天井まで大壁で仕上げた窯場が残る。
 明治期の七宝作家・並河靖之の製作及び生活の場が一式として残る極めて貴重な空間である。京町家の伝統を踏襲した近代和風建築の主屋,琵琶湖疏水を利用した植治の最初期の庭園は高く評価される。

参考 国登録有形文化財(建造物),
   京都市指定名勝,景観重要建造物


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