パビリオンコート
(株式会社 京都山中商会)(ぱびりおんこーと(かぶしきがいしゃ きょうとやまなかしょうかい))
[Pavilion Court(Kyoto Yamanaka Shokai)]
所在地 東山区
選定番号 第11-028号
推薦理由(抜粋)
元は古美術品の展示・収蔵施設。洋館,和館,門がある。大正9年(1920)池村元之助設計により建てられた洋館は,煉瓦積の壁体に鉄筋コンクリート造の梁とスラブを用いている。
認定番号 第190号
認定理由
パビリオンコートは,古美術商の山中吉郎兵衛が創業した山中吉郎兵衛商店の京都支店として用いられた建物である。同商店から分社化した山中商会は,海外に日本美術を輸出したことで知られる。後に京都山中商会となる京都支店は明治37年(1904)に開店し,木造の本館(現存せず)のほか,2棟の陳列・作業棟が建築された。陳列・作業棟のうち1棟が昭和42年(1967)に敷地内で移築され,和館として現存する。また,大正9年(1920)には洋風陳列館(現洋館)が建築された。
洋館は,池村元之助の設計,清水組の施工によるもので,鉄筋コンクリート造地上2階(地下1階)建てである。1,2階とも折上格天井で和風,洋風,中国風の意匠を折衷した独特の意匠である。洋館は,耐火性能の高い収蔵庫としての機能を有するとともに,海外からの顧客に対応することを意図したとされる。内部意匠に東洋趣味を採用したことも欧米の顧客を意識したものと考えられる。和館は木造平屋建の建物である。外観には蟇股や舟肘木等の寺院風意匠が用いられ,木彫は古材が使用されている。このほか,腕木門形式の門が残る。大正期に建築された茶室の中門を移築したとされるが,当初の所在地や由緒は不詳である。これらの建物は現在,結婚式場などに活用されている。
パビリオンコートは和風,洋風,中国風を折衷した独特の意匠を有し,戦前期に活躍した古美術商の陳列施設を伝える。近代京都の歴史の一面を伝える建築として貴重である。
参考 国登録有形文化財(建造物)