入江家(いりえけ)
[Irieke]
所在地 上京区
選定番号 第9-048号
推薦理由(抜粋)
土間の吹抜け,オクドさんの残る台所,掘炬燵から見る庭が好き。正月に親族が集まり,茶室と座敷を開け放してお雑煮を食べる。親族にとっても大事な建物である。
認定番号 第151号
認定理由
入江家住宅主屋の所在する堀川町は,古くは北野天満宮の「保(ほ)」として神人(じにん)が居住した地区で,明治元年(1868)より京都市上京区に編入されている。入江家は明治26年(1894)に町家を入手した。部材の状況等から明治前期に遡る建築と考えられる。大正7年(1918)には西側にやや建ちの高い座敷棟が増築された。東側棟は通り土間に沿って1列に4室を配する平面で,表側の部屋は天井を抜き洋室に改修されている。これは昭和初期に弁護士事務所を開業した時期のものと考えられる。西側棟は表側に,3畳台目の茶室を設ける。奥の8畳座敷は,床,違い棚,仏間を備え,床柱には磨き丸太を用いる。茶室前面には織部灯篭や蹲(つくばい)を用いて茶庭風に前庭を配する。座敷側には手前に蹲,奥に大きな春日灯篭とクロマツを配した庭がつくられている。
茶室や庭など茶の湯の場や,洋風空間を備えた,変化に富む良質な町家建築である。明治前期の町家に大正期に座敷部分が増築され,昭和初期の改修で洋室が設けられるなど,各時代の変遷を建物として伝える点でも評価される。
参考 国登録有形文化財