京都を彩る建物と庭園

認定 カトリック衣笠教会

(かとりっくきぬがさきょうかい)
[Catholic Kinugasa Church]
所在地 北区  選定番号 第10-041号

推薦理由(抜粋)
 昭和25年(1950)に創立したカトリック教会。旧聖堂は昭和27年(1952),新聖堂は昭和33年(1958)に献堂された。新聖堂建設には祇󠄀園の芸妓からアメリカの大富豪夫人となった「モルガンお雪」と呼ばれる女性が大きく尽力した。



認定番号 第229号

認定理由
 カトリック衣笠教会は、金閣寺にほど近い衣笠御所ノ内町に位置し、北大路通と西大路通の交差点に面している。米国・メリノール宣教会によって設立されたカトリック教会で、聖堂、伝道館(旧聖堂)などが建つ。昭和25年(1950)に教会が設立された当時は、既存の木造住宅を改修して礼拝を行っていたが、同27年に正式に聖堂(現伝道館)が建築された。この建物は木造平屋建、桟瓦葺の聖堂である。簡素であるが、入口の意匠にはロマネスク風の3連アーチを用いる。
 その後、信徒の増加により、昭和33年(1958)には鉄筋コンクリート造による新聖堂が建築された。信徒であったモルガン・ユキの献金により建築が可能になったという。モルガン・ユキは京都の刀剣商の娘に生まれ、アメリカ人富豪のジョージ・モルガンとの結婚を経て、莫大な遺産を手にした。日本の敗戦により遺産が凍結され困窮した時期に、京都教区のバーン神父に救われたことから、洗礼を受けたという。教会の記録から、新聖堂の設計はスイス人宣教師であるカール・フロイラー、施工は山中工務店によるものと確認される。フロイラーは1950~60年代に日本国内で百を超える数の教会の建築に関与したとされる。新聖堂は、白い箱を組み合わせたようなモダニズムの外観を有する。南西隅の入口を入ると放射状に会衆席が配置され、北東隅に祭壇を設ける。西側に小礼拝室(マリア聖堂)、北側には告解室と香部屋を配置し、南側に聖歌隊席が突き出す平面である。南面にはステンドグラスが嵌められ、聖堂内に彩られた光を注ぐ。新聖堂がモダニズム様式を採用し、旧来のバシリカ型聖堂とは異なる開放的な平面となった背景には、1950~60年代に進められたバチカンにおける典礼改革があるとされる。司祭が祭壇に向かう形式から対面式の典礼に変化したため、新聖堂では祭壇の位置も移動している。
 カトリック衣笠教会には、戦後間もなく布教を強化した時期の旧聖堂と、典礼改革を経た後に建築された新聖堂の双方が残る。戦後の布教の歴史とともに教会建築の変化を示す事例としても重要である。二つの大通りの交差点に建つ聖堂は、地域のランドマークともなっている。