藤井家(ふじいけ)[Fujiike]
所在地 北区
選定番号 第8-006号
推薦理由(抜粋)
北大路堀川の近くに建つ住宅で,昭和7年(1932)に建てられた。東棟と西棟がつながっているが,外観は1棟に見える。何度か増築しているが,間取りに大きな改変はなく,東棟西棟の1階2階それぞれに座敷がある。庭は石組で高低差をつけ,多様な植栽が植えられている。
認定番号 第144号
認定理由
藤井家は北大路堀川の北西側の区画に位置し,東紫野の区画整理事業地に当たる。同事業は昭和4年(1929)に事業決定し,同11年(1936)に完了している。昭和7年(1932)には北大路通に市電が開通し,以降急速に宅地化が進んだ地域である。同家の施主は,建設業(工務店)を営んでおり,昭和7年(1932)に居宅と作業場兼資材置場として納屋を建築した。
昭和12年(1937)には建設業を廃業したため,納屋部分を改修して借家としている。昭和35年(1960)以降は両棟を一戸の住宅として使用している。1階部分に出格子を入れ,2階にはガラス窓を嵌める町家型の外観を有する。平面についても東棟は当初,通り土間に沿って2列に4室を並べる町家型の形式であった。しかし土間上は吹き抜けとせず,10畳座敷の他2室を設けている。借家であった西棟も規模を縮小しつつ同様の平面構成をとる。南側には築山,灯篭,手水鉢を配した庭が設けられている。
藤井家は昭和初期に住宅地として開発が進んだ郊外に建てられた住宅建築であるが,町家を踏襲した形式で建てられている。京都における郊外の宅地開発の様子を伝える興味深い事例として評価される。