京都を彩る建物と庭園

認定 福田家
(ふくだけ)[Fukudake]
所在地 北区  選定番号 第8-005号

推薦理由(抜粋)
 区画整理事業で生まれた小山の住宅地に、昭和7年に建てられた洋風住宅。煉瓦の門や塀、赤茶色の屋根瓦、クリーム色の外壁が目を引く。アーチ窓や玄関ポーチの意匠も特徴。



認定番号 第243号

認定理由
 北区小山に所在し、東紫野の区画整理事業地に当たる。同事業は昭和4年(1929)に事業決定し、同11年(1936)に完了している。昭和7年(1932)には北大路通に市電が開通し、以降急速に宅地化が進んだ。福田家の建物は、登記簿資料によれば昭和7年(1932)頃に駿河屋京都駅前店の社長であった岡本邦二郎の住宅として建てられたことが分かる。設計・施工は熊倉工務店による。岡本は昭和15年(1940)に同工務店の設計・施工による下鴨の住宅に転居した。その後、江戸時代から続く金属箔粉業会社の社長・福田重助が現在の建物を譲り受けた。
 建物は木造2階建、桟瓦葺。外壁をスタッコ仕上げ、瓦の色を濃いオレンジ色、アーチ窓を用いるなどスパニッシュ風の外観意匠である。一方、内部は随所に施主の趣味が反映されている。玄関ホールに設けられた応接空間は円柱で飾られ、施主自らが描いた油彩画が壁面に嵌められている。居間と食堂が隣接し、折戸を開けると大きな空間が確保される。居間は釉薬掛けのタイルを貼ったマントルピース風ストーブ置場など、全体がモダンな意匠となる。居間の南側にはサンルームがつくられ、ガラスを嵌めた折戸によって全面が開口できるようになっている。タイルを貼った円柱が立ち、木製の梁型を支えている。2階は東側に洋室2室、西側に和室2室を配する。北東の洋室は北側面に天井まで届くスチール製サッシが嵌められている。施主の岡本はチャーチル会に所属する日曜画家であったため、北側採光を図ってアトリエとしたものである。南側洋室は入口のアーチやマントルピース風の装飾などにチューダー風を意識した意匠が見られる。渦巻文様を施した漆喰仕上げの天井も独特である。和室は8畳座敷と4畳次の間からなる。座敷は北山の絞丸太の床柱や濃厚な板目を見せるスギの天井板など、上質なつくりとなっている。
 福田家は昭和初期の区画整理事業による住宅地の歴史を伝える洋風住宅である。スパニッシュ風意匠の採用やアトリエを設けるなど、施主の趣味を反映した個性的かつ良質な近代住宅として重要である。