小西家(こにしけ)
[Konishike]
所在地 北区
選定番号 第9-005号
推薦理由(抜粋)
南と東に豊かな庭があり,よく手入れされ,四季折々に美しい。創建当時の趣を色濃く残している。
認定番号 第170号
認定理由
小西家は,御幣より,大工・松井久三郎により,昭和9年(1934)に上棟したことが確認される住宅建築である。施主の小西勉爾(べんじ)は,久美浜(現京丹後市久美浜町)の廻船問屋に生まれ,京都の呉服店に奉公した後,満州に渡ったという。満州では屋外で生育する蚕(野蚕種(やさんしゅ))による絹糸である柞蚕糸(さくさんし)の知識を得た。帰国後の明治42年(1909)に,柞蚕糸を扱う増井商店を出資者の増井氏との協働事業で上京区に創業している。
通りに面して門と塀,離れ,土蔵が建つ。門を入り奥まって建つ主屋は,木造2階建の桟瓦葺の建物で,玄関を入ると東西に中廊下が延び,南側にはザシキ,次の間,応接室,北側には台所や茶の間など内向きの空間が配されている。ザシキでは,床を残月風の床廻りの意匠とし付書院を並べている。応接室は玄関脇に配され,土間から直接入ることが出来るようになっている。2階は書斎として使用された洋室,和室が配される。和室は画家である現当主のアトリエに改修されている。ザシキに面する南側の主庭は,沓脱に大きな鞍馬石を用い,飛石を配する。東側の庭は,昭和60年頃に作庭された石を基調とした庭である。離れは西側の通りに面して玄関を設け,和室2室の他,台所も設けられている。
小西家は,昭和初期における規模の大きい和風住宅で,洋風応接室や数寄屋の意匠を用いた和室を有する主屋の他,独立性の高い離れ,土蔵を有する。時代毎に整備された庭園の質も高い。京都の繊維業の繁栄による富が残した邸宅建築の一つとして重要である。