京都を彩る建物と庭園

認定 藤野家
(ふじのけ)
[Fujinoke]
所在地 中京区  選定番号 第9-023号

推薦理由(抜粋)
 大正15年建築の京町家。昨今の土地バブルで,地価が高騰し,維持に難渋しているが,ホテルにするのはしのびないので,なんとか後世に引継ぎたい。





認定番号 第141号

認定理由
 藤野家は,白生地問屋の大塚商店(中京区)で番頭格を務めていた藤野外次郎によって建築された。主屋と土蔵に御幣が残され,棟梁三上吉兵衛の施工により,大正15年(1926)に上棟したことが分かる。
 建物は,木造2階建,桟瓦葺の建物である。通りに面して高塀(大塀)をつくり,門を設ける「大塀造」形式をとっている。表門を入ると右手の板塀に入口が設けられ,平屋建の表側棟の庭に進む。施主の外次郎は茶の湯を好んだとされ,表側棟の室には炉を切り,茶室としても用いられた。板塀の入口は露地門に見立てられ,庭には飛石,蹲が配されている。
 奥の居住棟は2階建で,1階のオザシキには北山杉の磨き丸太の柱を用いた床(とこ),付書院,違い棚を配する。2階オザシキは長押をまわさず,床(とこ)柱をアカマツの皮付きとするなど,より数寄屋風が濃厚である。居住棟の背面には,灯篭,蹲(つくばい),飛石を配し,土蔵を背景とした庭が設けられている。施主の好みを反映し茶の湯の空間を巧みに取り入れた瀟洒(しょうしゃ)な町家建築として評価される。

参考 国登録有形文化財(建造物),景観重要建造物,歴史的風致形成建造物