認定番号 第173号
認定理由
誉勘商店の建つ中京区冷泉町は,呉服商を営んだ誉田屋一統が店を構えた地域である。同商店は本家・誉田庄兵衛の一番番頭であった松井勘兵衛が暖簾分けした別家(べっけ)に始まるとされ,古くは享保16年(1731)の文書史料にその名が現れる。暖簾分けに際して,本家と競合しないようにするため金襴地(きんらんぢ)を扱うようになったと伝わる。戦後,誉勘商店に改称した。
建物は室町通に面して間口5間弱の店舗,南隣に居宅である3間半の町家が並び,一つの瓦屋根で葺かれている。いずれも表屋造の形式をとり,1階には出格子を嵌め,2階はむしこ窓とする伝統的な京町家の外観としている。店舗の建築年代は聞取りでは明治9年(1876)頃の建物と伝わっており,形式や部材からも同時期の町家であると考えられる。ミセ棟の上手にナカノマを配し,その奥にザシキを設けるやや変則的な表屋造形式をとる。大正6年(1917)の改造時の棟札が残る。この際,玄関棟を取り壊して中庭部分に部屋(ナカノマ)を設けたと伝わり,同室の床下には庭の痕跡が残る。奥には前後に2棟の土蔵が建つ。奥の家財蔵には文政3年(1820)上棟の墨書が残る。手前の商品蔵には文政10年(1827)上棟の墨書とともに大正6年(1917)改造時の棟札があり,主屋改造と同時期に,敷地奥からザシキの前面へと曳家されたと伝わる。大正期に店舗空間の拡大や商品蔵の再配置がなされたことが分かる。
誉勘商店は,江戸期から同業を続ける貴重な老舗である。間口8間半に及ぶ京町家の外観は壮観で,通りにおける重要な景観要素にもなっており,高く評価される。
参考 歴史的風致形成建造物
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