京都を彩る建物と庭園

認定 旧革島医院
(きゅうかわしまいいん)
[Kyuu-kawashimaiin]
所在地 中京区  選定番号 第14-006号

推薦理由(抜粋)
 昭和11年(1936)に外科医院として開院した住宅併設型の医院である。あめりか屋京都店設計施工の木造2階一部3階建で、今もなお変わらない姿で残されている。昭和初期の医院建築として重要な建物である。



認定番号 第237号

認定理由
 生祥学区に位置し、麩屋町通に西面して建つ。あめりか屋京都店の設計施工により、昭和11年(1936)に建築された。設計担当者は首藤重吉である。医師である施主の革島彦一は自ら設計図面をつくって発注し、担当の首藤による修正を経て、実施案がつくられたと伝わる。北側に住宅、環境の良い南側に医院を配置し、患者を優先した職住一体型の医院建築を意図して建てられた。
 木造2階・一部3階建で、通りに面して北西隅に円筒形部分を設け、その脇に住宅部分の玄関を配する。医院部分の入口は敷地の南側からアプローチする。屋根は洋瓦(フランス瓦)葺で、北西隅部分の円錐形の屋根は銅板葺としている。外壁はモルタル仕上げで腰部分にスクラッチタイルを貼る。西側面の中央には医院の階段部分が突き出し、上部にハーフティンバーの破風を見せている。住宅部分は1、2階とも東西方向の廊下の北側に室を配置する平面で、円筒形部分の1階は応接室となっている。南側の医院部分との間には中庭が配置され、東西2か所の動線が設けられている。医院の玄関ホールには美術タイルを用いた噴水や船窓をイメージした丸窓がつくられ、意匠的な見どころとなっている。玄関ホールを中心として事務室、診療室、手術室、待合室を配する。手術室はドイツ留学を経験した施主の意向で、白色タイルが貼られ水洗いが可能なドイツ式の形式にしたという。2階はL字型に通された廊下に面して、入院患者用の病室が配置された。病室には3~4人用の部屋と個室の2種類があり、いずれもフローリングの床にベッドを置いた。個室タイプの病室には、付き添い者の休憩のため一部に床高を上げた畳敷空間が設けられている。3階は屋上や物置となるが、円筒形部分は当初図面では「展望室」と記されている。
 革島医院は、昭和初期における職住一体の医院建築である。内外に施主のこだわりが強く反映され、特徴的な意匠の建築となっている。最新の医療空間への志向も強く見られる。昭和初期の規模の大きな医院建築を伝える貴重な建物として高く評価される。

参考 国登録有形文化財(建造物)