禄々荘(ろくろくそう)
[Rokuroku-so]
所在地 西京区
選定番号 第9-019号
推薦理由(抜粋)
大原野神社の社家を鉄筋コンクリート造の建物の上に移築した。茅葺き屋根が特徴である。
認定番号 第150号
認定理由
禄々荘は6代・清水六兵衛の別荘として建築された建物で,大原野神社に程近い山あいに建つ。熊倉工務店の施工により,大原野・北春日町の近世に遡る古民家を移築して建築された。建物が落成したのが1966年(昭和41年)であることにちなみ,六兵衛により禄々荘と名付けられた。斜面に鉄筋コンクリート造で地下部分をつくり,そのうえに民家を移築している。
入母屋造(いりもやづくり)の豪壮な茅葺き屋根の外観で,妻側に玄関を設ける。内部は中廊下を通して南側に4室の和室,北側には囲炉裏の間,茶室を配しており,移築の際に平面形状も変更されていることが分かる。囲炉裏の間は小屋組を見せ,囲炉裏のある板敷きと一段上がった畳敷としている。この意匠は河井寛次郎邸(現河井寛次郎記念館)の広間に見られるように,河井が好んで用いた意匠である。熊倉工務店創業者の熊倉吉太良(くまくらきちたろう)は,河井とも交友を持ち,民芸風の住宅も施工している。「民芸的な健康美へのあこがれ」によって古民家を移築したことを六兵衛自身が記しており,民芸風意匠を意図して改修の設計がなされたと考えられる。
近世に遡る古民家の移築改修事例としての価値に加え,陶芸家が民芸風意匠を意図し,民芸への素養を有する施工者とともにその嗜好を表現した希少な建築作品として重要である。