京都を彩る建物と庭園

認定 西岡家(レストラン スポンタネ)

(にしおかけ(れすとらん すぽんたね))
[Nishiokake(resutoran Supontane)]
所在地 西京区  選定番号 第9-045号

推薦理由(抜粋)
 明治に建てられた住宅で,屋久杉などが使われている。昔の間取りのままレストラン兼住宅として使っており,このまま維持継承して後世に伝えたい。





認定番号 第227号

認定理由
 西京区大原野上里北ノ町に位置する。昭和50年代に洛西ニュータウンが開発され農村景観が急激に変貌した地域に隣接するが、谷岡家の立地する集落は伝統的な街道沿いの景観を残している。当地の地主であった高井家の家屋として建てられたものである。東西の通りに面して表門と板塀を配する屋敷構えで、敷地東側に主屋、西側に離れ、南東隅と主屋の背面に土蔵が残る。平成25年(2013)に現所有者が購入し、レストランとして活用している。
 主屋は、間口五間半、奥行き六間半の規模で、桟瓦葺、つし2階建ての建物である。表側に入母屋造の屋根を向け玄関を設ける、妻入り形式をとる。大屋根部分の下にはむしこ窓を設けて下屋を葺き下ろしている。御幣が残され、明治36年(1903)の上棟と確認できる。内部は昭和40年(1965)頃に土間部分を居室化するなどの改修がなされたが、聞取りから、改修以前は東側部分はカマドが残る台所空間で、西側には3室が並んでいたことが分かる。こうした平面形式は、摂津や丹波地域に分布する摂丹型民家の平面に類似する。現在でも西隣の石作町地区には妻入形式の民家が残るように、大原野地区は摂丹型民家の分布圏に所在しており、谷岡家もその系統に属するものと考えられる。主屋の西側には瓦葺、平屋建の離れが建ち、表側と背面の2本の廊下で主屋と繋がれている。御幣から大工・安井繁次郎の施工により、昭和7年(1932)に上棟したことが確認される。表側に8畳の座敷と次の間を配する。座敷は床柱にヒノキの四方柾を用い、桟に意匠を凝らした付書院のガラス戸、キリ材の欄間など、質の高い造りとなっている。座敷の背面には廊下を隔てて4畳半間があり、以前は「お茶室」と呼ばれていた。アカマツの柱を用いるなど数寄屋意匠の部屋である。
 谷岡家(レストランスポンタネ)は、改変を経ながらも、大原野地区の地主層の屋敷構えを今に伝える貴重な事例である。所有者の変遷を経ながら、用途を替えて継承される活用事例の好例でもある。