認定番号 第195号
認定理由
瓢亭は近江国出身の商人である近江屋の9代目・嘉兵衛が,門番をつとめながら茶店を営んだことに始まると伝わる。南禅寺表参道には4軒の番所があったが,江戸期にはその維持のために副業が営まれるようになり,後に料亭につながったとされる。元治元年(1864)刊行の『花洛名勝図会』の挿絵には後の瓢亭にあたる場所に,既に茅葺の茶店「松林茶屋」が描かれている。後の瓢亭に当たる。谷崎潤一郎の小説『細雪』にも描かれるように,瓢亭は明治以降,政界人や文化人が訪れる老舗料理店として知られた。現在,主な建物として,店の入口となる敷地の南東に主屋,西寄りに「新席」,「広間」,池と流れを挟んだ北側には「探泉亭」,「くずや」が建つ。主屋は通りに入母屋屋根を見せる元柿葺の建物で,玄関,帳場,厨房などが配される。各時代に改修を受けているが,瓢箪型の木製看板裏書に記されるように,江戸後期に遡る部分が残る可能性も考えられる。「新席」は四畳半に次の間が付く茶席としてつくられた建物で,明治15年(1882)上棟の棟札が残る。茅葺の「くずや」も四畳半に3畳間が付く平面。「広間」は昭和前期に数寄屋大工の「平井某」によって施工されたと伝わり,4室を襖で区切る平面で,瓢亭において唯一の広間空間である。庭園の中心となる池と流れは,琵琶湖疏水の水を引き無鄰菴から流れ込むもので,流れに面した各建物を,木橋や石橋を渡って巡る構成が空間としての魅力となっている。
瓢亭は,京都を代表する老舗料亭であり,各時代に著名人が訪れた場として京都の文化史の一頁を彩っている。そうした歴史を伝える建物群が現存することも極めて貴重である。
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