認定番号 第188号
認定理由
重森三玲(1896~1975)は昭和期に活躍した作庭家として著名である。吉田神社の社家・鈴鹿家の屋敷を,昭和18年(1943)に購入したもので,吉田神社の旧表参道であった通りに面して,長屋門を構える。主屋,書院のほか,自身が設計した好刻庵が残る。書院南側には自身の設計による庭が配されている。
長屋門は明治35年(1902)の建築。主屋は式台を入ると右手(東側)に居室部,左手に土間・台所を配する。上手列の座敷,小座敷には重森のデザインによる襖絵も嵌められている。近世に遡ると考えられている。主屋東側に建つ書院は,南側の庭に面して15畳間を設け,背面に床と違い棚を備える。墨書から,文化期には建築されていたと考えられる。屋敷購入後に,自らの設計で,昭和28年(1953)に書院背面の室を茶室・無字庵に改修し,同44年(1969)には好刻庵を増築した。いずれも市松模様を基調とした襖絵が特徴的である。庭園は少しずつ手を加えながら,昭和44年には現在の姿が完成した。青石を立てて景石と白砂によって山水をあらわす重森独特の意匠を有する。
重森三玲邸は近世に遡る吉田神社・社家の屋敷に自身の設計により手を加えていった遺構で,庭園にとどまらず重森の総合芸術作品と呼ぶことができる。社家屋敷としての価値に加え,重森の創作によって歴史的な重層性を有する,極めて重要な建築・庭園と評価することができよう。
参考 国登録有形文化財
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