認定番号 第165号
認定理由
茂庵は運輸業で財を築き,数寄者としても知られた谷川茂次郎(1862~1940)が,吉田山山上に茶席の場として建築した建物群である。大正10年(1921)から土地の購入を始め,同15年(1926)までに建築された。
旧点心席(てんしんせき),田舎席(いなかせき),静閑亭(せいかんてい),待合が現存している。旧点心席は木造2階建で,茶会における食堂として使用された。1階を厨房とし,2階は一室の板間で大きな窓を設け眺望を意識した空間である。東側面を懸造とする特徴的な外観を有する。静閑亭は8畳の主室に水屋が接続する茶室である。田舎席は,6畳と4畳半間からなる茶室である。染付のタイルを張った地下室を有し,同室はワインセラーとして用いたと伝わる。なお,吉田山の東斜面には谷川茂次郎が同時期に開発した神楽岡住宅群が残る。
茂庵は,実業家,数寄者である谷川茂次郎によって吉田山山上に建てられた茶苑に由来し,大正後期の茶の湯の場を色濃く伝える重要な建物として評価される。現在,カフェとして活用されており,近代の数寄空間に市民が気軽に触れることができる点も貴重である。
参考 国登録有形文化財(建造物)
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