認定番号 第146号
認定理由
栖賢寺は臨済宗大徳寺派の寺院である。応安・永和年間(1368~1379)に摂津国尼崎に創建され,明治以降は無住となり荒廃していた。昭和3年頃に移転による再建が計画され,昭和7年(1932)に現在地に新築された。大阪の綿花商・山口玄洞(げんどう)が資金を寄進し,敷地も山口の所有地が提供された。上下二段に造成された境内の下段に表門,本堂,庫裏,茶室・残照亭(ざんしょうてい),上段に観音堂,金鳳閣(きんぽうかく)が建つ。
設計は山口寄進の社寺建築を多数手がけた元京都府技手・安井楢次郎による。昭和4年(1929)竣工の本堂は,入母屋造屋根,桟瓦葺で,2列に3室ずつを並べる方丈形式である。昭和7年(1932)竣工の観音堂は寄棟造,銅板葺の強い反りを描く屋根で,畳敷の外陣と3間に分かれる仏間を持つ内陣からなる。同年竣工の金鳳閣は,銅板葺の宝形造(ほうぎょうづくり)屋根で,二重の楼閣建築である。本堂の西側には流れを配した庭が設けられ,飛石を置いた苑路が観音堂や金鳳閣へ向かっている。
実業家・山口玄洞の寄進により建築された近代における復古調の寺院建築で,自由な意匠が用いられている。変化のある豊かな境内空間を伝えることに加え,実業家の支援による近代における寺院の復興事例としても重要である。
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