京都を彩る建物と庭園

認定 正願寺
(しょうがんじ)
[Shoganji Temple]
所在地 左京区  選定番号 第10-002号

推薦理由(抜粋)
 浅井了意が住職を務めた寺で,本堂は江戸後期の建物。街中の狭い敷地に建ち,真宗大谷派の本堂として独特な建築形式。長屋門を持つことも興味深い。



認定番号 第187号

認定理由
 正願寺は浄土真宗大谷派の寺院である。慶長期に御所の南側の地に創建されたが,宝永5年(1708)の大火で焼失後,現在地に移転した。同時期に移転した寺院群によって形成された二条寺町の一角に立地する。その後,天明の大火でも被災し,現在残る本堂は棟札より文政2年(1819)建築と確認される建物である。通りに面してむしこ窓を有する長屋門を構え,境内には本堂,庫裏のほか,茶の間と呼ばれる居室が一体となって建つ。庫裏,茶の間とも近世に遡る建物と考えられる。
 長屋門を入ると左手に庫裏,正面が本堂となる。本堂は4室からなり,正面奥に須弥壇を備えた内陣,その北側に余間,表側には床を一段下げた2室の外陣を配する。内陣を格天井,ほか3室は棹縁天井とする。内陣と外陣境の欄間には,金箔を施した天女の木彫が嵌められている。表側に玄関,台所の旧土間部分,奥に4室の6畳間を配し,玄関脇の室には式台を備える。本堂の北側となる部分には床廻りを備えた茶の間が置かれ,同室は小さな奥庭に面している。庫裏の式台から本堂や座敷へと動線が通り,限られた空間に礼拝,居住,接客の空間をコンパクトにまとめた都市型の寺院建築と言える。
 正願寺は,二条寺町を形成し,建築年代の明らかな江戸後期の寺院建築である。通りに面して長屋門を構え,本堂や庫裏を一体化した建築空間は都市型の寺院として重要な事例である。町並を構成する景観要素としても評価される。