認定番号 第218号
認定理由
久保田美簾堂は下京区の東洞院通仏光寺下るに所在する老舗の御簾店である。明治16年(1883)に簾や竹製品を扱う久保田清次郎商店を創業したことに始まる。明治31年(1898)頃に現在地に移った後、新築したのが現在の建物である。登記簿資料などから、建築年代は明治33年(1900)頃と考えられ、昭和初期以降度々増築がなされたことが確認できる。第5回内国勧業博覧会(明治36年(1903))や日英博覧会(明治43年(1910))で受賞するなど家業は繁栄した。大正末期から「久保田美簾堂」を名乗るようになったという。
建物は間口約4間の規模を持つ、ツシ2階建て、大棟型の町家である。1階は入口の両側の庇下部分にショーウィンドーを設ける。2階は幅3間のガラス窓を嵌めるが、店名を彫ったケヤキ材の看板が掲げられ外観のポイントになっている。内部は、1階では南側に吹抜けの残る通り土間が通る。ミセ空間にはカウンターを備えた板敷空間とツシ2階への階段を有する3畳間を配する。その奥は居住空間でダイドコロや6畳間の仏間が設けられ、奥庭に面する室は昭和15年(1940)に増築された建物である。ミセ空間の3畳間は居住空間からは閉鎖され、職住の分離が図られている。2階奥側には床と違い棚を備えた8畳間などが配置される。ミセの3畳間に葭を用いた網代による天井や建具が見られるなど、各所に葭が使用される点に、御簾店としての個性が感じられる。主屋の奥には作業場と離れが配置されている。昭和52年(1977)に改築されたものだが、明治以来の空間構成を伝える。
久保田美簾堂は、改修を経ながらも明治期創業の老舗御簾店の店舗・居宅の建物を継承する貴重な事例である。伝統的な店構えは景観要素としても重要である。
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